ブルーブラック2
そう聞いて百合香は何も言葉が出てこなかった。
別に美咲に何か特別な感情を抱いている訳ではない。でも、研修生として一緒に働いたことは事実で、まだ日も経っていなければ記憶にも新しいし色々と考えてしまう。
あの日、あの涙を流した時に同じようなことは二度としないだろうと百合香は勝手に解釈していた。
でも、もしかして。
もしかしてまた、なにかトラブルでも起こしてしまったのだろうか――。
そんな風に考えていたら隼人の方から口を開いた。
「何かあった訳ではないみたいですよ」
「え・・・?そうなの?」
「なんか、やりたいことが見つかったんだと言ってました」
あの美咲のやりたい仕事とはなんだろうと、純粋に興味を持って想像する百合香に隼人は一人、続けた。
「それがなんなのかは知らないですけどね。でも、」
「“でも”?」
「それを、おれに伝えて欲しいって」
「?」
「“神野さん”に」
隼人から美咲の意志を聞いて百合香は驚いて目を丸くした。
「どうせなら自分で直接報告すればいいのにって思いますけどね」
隼人のその言葉に百合香は思う。
きっとこれが今の彼女なりの精いっぱいなのだろう、と。