ブルーブラック2


「クリスマスイブに誘うってどんな神経だ」



更に時は流れて暦は師走――。
それも、一番盛り上がるであろう12月24日の夜に、そうぼやいたのは智だった。


「まぁまぁ。朱里ちゃん直々のご指名ですから」


今にも雪が降りそうなくらい冷たい空気の中、百合香と智は裏口を出て駐車場に急いだ。


「江川さんは一緒に向かわないんですね?」
「ああ、寄り道するとこあるからって閉店してすぐ出てったからな」
「寄り道・・・ああ!もしかして“サンタ”の仕事かな」


百合香は肩を縮めて白い息を吐いて楽しそうにそう言った。

きっと江川は愛娘の為に何かプレゼントを用意したりするのに忙しいんだろう、と。


駐車場につくと白い車が寒そうに百合香と智を待っていた。

ピピッと音が鳴って解錠された車に二人は乗り込む。
百合香がシートに腰を据えてシートベルトをしようと手を右側に持って行った時だった。


「家に帰った後、仕切り直ししよう」


ふわりと頬に手を添えられて軽く唇を重ねられながらそう言われたのだった。

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