ブルーブラック2
「すみません、そろそろ」
「あら、うちはいいのに」
「あ、でも朱里ちゃんもとっくに寝る時間過ぎてるでしょうし」
玄関先で靴を履いた百合香と智は江川夫妻に向き合って挨拶をしていた。
「それじゃあ、おやすみなさい、朱里ちゃん」
「おあすみーうりかちゃん」
屈んだ視線の高さに先程贈った絵本をしっかりと握りしめて笑顔でそういう朱里がいて百合香は心が温かくなった。
「ばいばいーなーなくん」
「・・・いい子で寝ろよ」
「ばいばいーうりかちゃん」
「うん。ばいばい」
「ほら!朱里!キリがないでしょう?!」
エンドレスで続きそうな朱里の挨拶をまどかが止めた。
それでもドアを半分開いても朱里はずっと話をしていた。
「うりかちゃーん、なーなくーん」
「あーかーりー」
「・・・おあまえは?」
「え?」
急に朱里がきょとんとした顔でそういうからまどかも他の皆も不思議に思って朱里を見た。