ブルーブラック2

「で、でも…一応明日がクリスマスだから、まだ気は抜けないかも…きゃっ」


百合香がぽつりと言った時、智は百合香の手をさらに強く引き寄せた。
その態勢はソファに座る智の上に乗る形になってしまい…。


「お、重いから!」


百合香が慌てるも、智はそのまま百合香の背中に手を回して解放してはくれなかった。


「…そうだったな。明日に備えて早めに休まなきゃ…本当なら」


胸に埋めていた顔を離して百合香は智の顔を見る。
そこにはさっきのような優しいだけの笑顔じゃなくて、ちょっと意地悪い雰囲気も混ざったような笑顔の智がいた。


「だけどもう少しだけイブを過ごさせてもらおうかな」


ニヤリと笑った口元が視界に入った瞬間、百合香は唇を奪われる。
酔っているわけではない。
それでも智のキスは、お酒が入っているかのように、だんだんと激しく情熱的になっていく。


「…ンンッ…!」


酸素を取り込むことも上手く出来ないくらい、智のキスはそのままで一向に終わる気配がなかった。

百合香はそんなキスに、恥ずかしさと、嬉しさと、苦しさと…。
色々なものが混ざり合って何も考えられなくなる。

ただ、自然に手が智のシャツを握るだけ。

少しの間だけ、唇が離れて、百合香はその時ばかりにと呼吸を整える。
そして涙目で智をちらりと見上げると、漆黒の瞳と視線がぶつかり合う。

次の瞬間、また呼吸と心を奪われるようなキスが待っていた―――。


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