ブルーブラック2
「こ、これ…すごく高価なんじゃ…!!」
百合香はそこで初めて時計から視線を外して智を見た。
「―――別に、そこまで経済的に苦しくないよ」
ふっと笑いながら智は答えた。
百合香は家計の心配をしたのではなく、自分に到底似つかわしくないのではないかという不安と、自分の贈り物との差が気になったのだ。
「わ、私のこんなに素敵なものじゃなくって……」
「どうして?でも百合香が悩んで選んだんだろう?」
「…そうですけど、でも」
「だったら一緒。俺にとって最高のプレゼントだよ」
そういって智は自分の受け取ったプレゼントの中身をそっと取り出して優しく視線をそれに向けた。
「どう?」
「…はい。イメージぴったりでした…」
智がそう言って百合香に見せたのはタイピン。
その場ですぐにそれを付けた姿を見て、百合香はつい感情が高ぶって薄らと涙を浮かべて笑顔で言った。
「…なんでまた泣きそうになるの」
「さ…としさんが、いつでも優しいから…」
「…ああ。言っておくけど、その時計も“俺が”同じものにしたかっただけ―――」
「智さんを“いつでも想うように”ですか」
上目遣いでぽつりと百合香が言うから、智は一瞬驚いた顔を百合香に向けた。