ブルーブラック2

「いや。なんか…なんとなく、そう感じただけ」
「例えばどんなことですか?」
「うーん…例えば…? アイツにしては妙な…」


手を顎に添えて、宙を見るようにして江川が思い返している。
百合香は黙ってその話の続きを待っていた。


「他のやつには気付かないくらいかもなぁ…もともとが落ち着きすぎで隙がないもんな、柳瀬は」


ぽつりと漏らす江川の言葉に、半分首を傾げながら百合香は聞く。


「ただ、なんつーか…ちょっとした時に挙動不審っつーか。なんかしようとして、止まって、また仕事戻る、みたいな」


説明している江川が訳がわからないように話すことだ。
百合香も余計に首を捻るだけだった。


「百合香ちゃんも知らない? じゃあ見てみて。その瞬間のアイツ、ちょっと面白いから」
「面白い……」


最終的には「面白い」と言う江川の話は、どうやら深刻な感じではないことに百合香はホッと胸を撫で下ろしつつ、その“面白い智”が気になって、後で様子を見てみようと思った。


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