ブルーブラック2
第二章
1.特別な存在
*
「店長!」
「…――なに?生田さん」
定時に上がると言っていた智はその約束を守り、机の上を整理しながら美咲に対応していた。
「柳瀬店長は1階のことも2階のことも詳しいんですか?」
「あー··どうかな。1階は江川の方が詳しいよ」
「へぇ··じゃぁボールペンとか万年筆とかは店長が一番なんですね?」
「一番かどうかは、どうだろうな」
ただの雑談ともとれる会話をなぜわざわざ今ここにしにくるのか。
智は心の底からすぐにでも退散してしまいたくて話を終わらせるように言った。
「じゃ、お疲れ」
特に重要な用件もなさそうだと判断した智が席を立とうとした時に美咲が一歩前に出て行く手を阻み、大きな目で見上げながら智に言う。
「それ、万年筆ですよね?少し試させてもらえませんか?」
―――極上の甘い微笑みで。
その指をさした先は智の胸ポケット。智の特別な一本、“桜”だ。
「店長!」
「…――なに?生田さん」
定時に上がると言っていた智はその約束を守り、机の上を整理しながら美咲に対応していた。
「柳瀬店長は1階のことも2階のことも詳しいんですか?」
「あー··どうかな。1階は江川の方が詳しいよ」
「へぇ··じゃぁボールペンとか万年筆とかは店長が一番なんですね?」
「一番かどうかは、どうだろうな」
ただの雑談ともとれる会話をなぜわざわざ今ここにしにくるのか。
智は心の底からすぐにでも退散してしまいたくて話を終わらせるように言った。
「じゃ、お疲れ」
特に重要な用件もなさそうだと判断した智が席を立とうとした時に美咲が一歩前に出て行く手を阻み、大きな目で見上げながら智に言う。
「それ、万年筆ですよね?少し試させてもらえませんか?」
―――極上の甘い微笑みで。
その指をさした先は智の胸ポケット。智の特別な一本、“桜”だ。