ブルーブラック2
「お待たせ」


いつものパーキングに停めてある白い車。
その後方で目立たないように少し車にもたれ掛かって立っている百合香の姿を見つけて智は声を掛けた。

その声が耳から入ってきた瞬間に、百合香の表情は一変して智に満面の笑みを向ける。まるで飼い慣らされた犬のように本当に嬉しそうに。


「智さん!お疲れ様です!」


ぱあっと華やいだ百合香の顔を見ると、智はいつだって幸せな気持ちになれる。


「今日は外食にしよう」
「わぁ!久しぶり…かな?」
「たまにはエスコートさせて“神野さん”」
「···やだ!なんかその呼び方、改めて言われると照れます」
「店ではいつもそうなのに?」


二人でくすくすと笑いながら車に乗って夜の道を走り始めた。
毎日一緒に過ごしていても、こうして仕事帰りを共にすることは稀なので、百合香はまた特別な雰囲気に感じて浮き足立ってしまうのだ。


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