ブルーブラック2
「それで、なんでそんなに喜んでるの」
「―――だって」
智が一息ついてソファに座って立っている百合香を見上げて言った。
百合香はさっきまでの元気が嘘のように急にしおらしい感じになってもじもじとしている。
「“K”じゃなくて“Y”って入れたから···」
百合香の言い分はこうだ。
神野の“K”ではなく、柳瀬の“Y”と彫ってもらったから嬉しいのだ、と。
その名入れの内容も自分でオーダーしたのだから、当たり前なのだが、やはり文字にして見ると智と一緒になったんだと、改めて実感できてそれを見るだけで幸せな気分をいつでも思い出せる。
「今更なに言ってるの。保険証も、通帳も、契約書だって“柳瀬”だろう」
「でも職場は“神野”だから。そこでこういうのひとつでもあるとなんだか嬉しく思えたの」
「じゃあ“柳瀬”で働く――?」
「―――は、恥ずかしいから···」
「―――だって」
智が一息ついてソファに座って立っている百合香を見上げて言った。
百合香はさっきまでの元気が嘘のように急にしおらしい感じになってもじもじとしている。
「“K”じゃなくて“Y”って入れたから···」
百合香の言い分はこうだ。
神野の“K”ではなく、柳瀬の“Y”と彫ってもらったから嬉しいのだ、と。
その名入れの内容も自分でオーダーしたのだから、当たり前なのだが、やはり文字にして見ると智と一緒になったんだと、改めて実感できてそれを見るだけで幸せな気分をいつでも思い出せる。
「今更なに言ってるの。保険証も、通帳も、契約書だって“柳瀬”だろう」
「でも職場は“神野”だから。そこでこういうのひとつでもあるとなんだか嬉しく思えたの」
「じゃあ“柳瀬”で働く――?」
「―――は、恥ずかしいから···」