ブルーブラック2
智が百合香の腕を捕まえて引っ張ると、自分の足の間に百合香を置いて目を見つめた。


「“神野さん”のファンが多いから、急に柳瀬と名乗れば俺が責められるな」
「そんなことはないですけど!」
「まぁ、百合香の好きにしたらいいよ―――店ではね」


軽く握られていた手首を急にグイッと力を入れられると、百合香の体は当然前のめりになって智の上に乗る形になってしまった。


「店以外は、柳瀬百合香。俺のだよ」
「も、もう··智さんの嘘つき」
「なんで?」
「――――お店でもたまにイケナイことするくせに」


頑張って怒ったように智の肩に手を置き間近で見下ろして百合香が言うと、智がスッと右手を百合香の後頭部へと回して髪をくしゃっと優しく掴んだ。


「イケナイことって、こういうこと?」


ニッと静かに笑うその顔はいつもの生き生きとした智で、そのまま百合香の唇を奪った。



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