ブルーブラック２
「すみません、ちょっと研修レポートについて、斉藤くんに」


いつでも実践している上目遣いスマイル。
１５０センチ台の百合香よりもまだ小さい美咲はその小柄な容姿を活かして全身を使って“可愛さ”を演出する。

そしてそんな美咲に周りの男性は殆どと言っていいほど“それ”に引っ掛かるのだ。


ごく一部、柳瀬智のような人間を除いて―――


「斉藤くん、これ」
「え？」
「じゃあ、また」


話があると言って来た美咲だが、さすがに店内、しかも坂谷がすぐそこにいる為、用意しておいたメモを意味深な感じで手渡すと、ちょうど１階からも社員がやってきて朝礼が始まった。


「おい、斉藤」
「はい？」
「…生田さんといい感じなんじゃないのか？」
「ばっ····バカ言わないで下さい！大体おれは···」


朝礼の最中に坂谷が冷やかしで隼人に声を掛けたが、すぐに周りの視線を気にして口を噤んだ。
少ししてから、懲りずに坂谷がどうしても言いたかったことを隼人に言った。


「オマエは生田さんとかの方が話しも合うだろうしお似合いだよ」


それは恐らくもう気持ちがない筈なのだが、百合香を慕う隼人に対しての嫉妬。

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