ブルーブラック2

「ね?来てソンはなかったでしょ、年上好みの斉藤くん!」


普通だったらそんな言われ方をしたら、手こそ上げはしないがそれ相応の冷ややかな視線を浴びせてコーヒー代をおいて出て行くだろう。

しかし今の隼人はそうはしなかった。


「どういうことだよ?なんでそんなこと生田が···」
「簡単じゃない?―――私にもそうやって手を出されそうなんだから··」


今までで一番小さな声で。
それも蜜をたっぷりと含むような甘い声で美咲がそう囁く。


「まさか―――」
「いいわよ別に。信じようが信じまいが。ただ、放っておいて“食べられちゃいました”じゃシャレにならないのは、斉藤くんでしょ」


隼人は何か思いつめたように美咲の前にある紅茶を見つめて暫く黙りこむ。
美咲はその紅茶を優雅に口に含むと艶やかな唇をさらに動かす。


「一番近くにいる人が守りやすいんじゃない?」
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