ブルーブラック2
江川と綾がそれぞれ業務に戻ったところを見計らって美咲は江川に近づいた。


「江川さん」
「えっ··!あ、ああ。なに?生田さん」
「ちょっと、ロッカーに忘れ物をしてしまって···取りに戻っても大丈夫ですか?」
「忘れ物?まぁいいけど、なるべく早く戻ってね。今後気をつけて」
「はい!ありがとうございますっ」


最後の美咲の笑顔に江川も少しくらっとした。

男なら、やはり可愛い女の子の笑顔には弱い部分はあると思う。と、江川は心の中で肯定した。

しかし、自分とは全く違う智にはこんな笑顔なんて通じないんだろうと、先程の綾との話も心配することないかと思ってしまう。

ぱたぱたと小走りでウェーブがかった髪を揺らす美咲の後ろ姿を江川は目を離すことが出来ずに見えなくなるまで立っていた。

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