ブルーブラック2
*
「あれ?神野さん、プライス印刷しに行ったんじゃ――?」
「あ··うん。後でもいいかなって。考えたら社員いなくなっちゃうしね」
「そんな、数分大丈夫ですよー。いいんですか?」
「うん。休憩のときについでにしてくるから。ありがとう」
バイトの湯川が百合香を気遣ってくれる。
しかし百合香はそれをやんわりと断って事務所に再度行くことを辞めた。
つい少し前、事務所の専用印刷機で商品のプライスを作成するために百合香は5階の事務所に向かっていた。
エレベーターが1階から長らく動かなそうだった為に階段で5階へ向かう。
5と書いた重い扉をゆっくりと開けると男女の声が聞こえてきて反射的に物音を立てないようにその声のする方を見てみた。
その声の主は、あの油断出来ない美咲と―――智だ。
普通に歩いて出て行って、2人の間に現れれば一番よかったのかもしれない。
けれど、百合香は息を潜めてそのまま2人を見ることしか出来なかった。
2人の会話こそはっきりは聞こえないが···
すると目を疑う光景が飛び込んできたのだ。
智に抱きつく美咲――それを受け入れたようにも見える智。
そして彼女は何かを彼のポケットに入れてこちらに向かってきた。
百合香は非常階段の影に隠れて美咲にバレないようにやり過ごしたのだった。
「あれ?神野さん、プライス印刷しに行ったんじゃ――?」
「あ··うん。後でもいいかなって。考えたら社員いなくなっちゃうしね」
「そんな、数分大丈夫ですよー。いいんですか?」
「うん。休憩のときについでにしてくるから。ありがとう」
バイトの湯川が百合香を気遣ってくれる。
しかし百合香はそれをやんわりと断って事務所に再度行くことを辞めた。
つい少し前、事務所の専用印刷機で商品のプライスを作成するために百合香は5階の事務所に向かっていた。
エレベーターが1階から長らく動かなそうだった為に階段で5階へ向かう。
5と書いた重い扉をゆっくりと開けると男女の声が聞こえてきて反射的に物音を立てないようにその声のする方を見てみた。
その声の主は、あの油断出来ない美咲と―――智だ。
普通に歩いて出て行って、2人の間に現れれば一番よかったのかもしれない。
けれど、百合香は息を潜めてそのまま2人を見ることしか出来なかった。
2人の会話こそはっきりは聞こえないが···
すると目を疑う光景が飛び込んできたのだ。
智に抱きつく美咲――それを受け入れたようにも見える智。
そして彼女は何かを彼のポケットに入れてこちらに向かってきた。
百合香は非常階段の影に隠れて美咲にバレないようにやり過ごしたのだった。