その指先で…
彼の指先
――ずっと見てたその指先。
繊細で綺麗で、なのにくっきり浮かぶ手の甲の青い筋。
それが男の人って感じで、色っぽくて。
私なんかよりもずっと長くてたくましいそれに、いつも触れたくてしょうがなかった。
「松井、まだいたのか…」
誰もいないオフィスにあなたの声が響く。
クールで有名な主任の瞳が真っ直ぐ私の視線に伸びてくる。
「あ、はい……。どうしてもこの資料だけは今日中にやっておきたくて…」
ふいに主任の手に向ける。
長い指…
資料を持つさりげないその仕草にも、一瞬目を奪われそうになってしまう。
「あの、ここがよく分からないんですけど、少し見てもらってもいいですか?」
「……ああ」
もっと近くで見つめたくなって、嘘をついた。
誰もいない静かなオフィス。
今日だけ、
ほんの数分でいいからもっと近くで感じたい……
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