えりあし
えりあし
「バカみたいだよなぁ。超つまんねぇ」
バカはあたし。
ずっと、ずーっと同じ事を考えてる。
「遥?」
2人で借りてきたDVD。床に座って映画を観ていた幼なじみがいきなり振り返った。
「え?……えーと」
やばい。
映画なんて全然観てない。
あたしが見てたのは……彼だ。
「また寝てたんだろぉ。お前が観たいっつったのに」
「お、起きてたってば!」
慌てて否定してみても、彼にはお見通し。
呆れたようにため息をつくと「ま、いいけど」ってまた映画をながめだした。
……よくない。
ちっともよくないし。
深夜をとっくにまわって、年頃の男女が2人きり。
薄暗い部屋にいるっていうのに、いい雰囲気どころか、呆れられてしまった。
この状況をなんとか打破したい。
『幼なじみ』の枠から脱却したい。
その思いを込めて、彼の後姿を見つめていた。
「……」
「……」
映画の世界は甘美なものだった。愛し合う2人。
艶かしい身体が揺れていた。
話をするのも変だし、かえってずっと無言もおかしい。
でも……あたし達はかたずをのんで、画面を見つめていた。
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