見てるのはあなたじゃない
彼を見てる理由
「斎木さんって肌綺麗だよね」

「変態」

「鎖骨の形も綺麗」

「それセクハラだから」


居酒屋のカウンター。
並んで飲む相手はライバル会社の営業。

こんな所会社の人間に見られたらマズイ。
そう分かっているのにまんまと誘いにのってしまったのは。

「斎木さんだっていつも俺のこと見てんじゃん」

「違う。私が見てるのはアンタじゃなくて……」

否定を照れ隠しと捉えたのか、喉の奥で小さく笑ってジョッキを呷る彼。
ゴクリと喉仏が大きく上下する。

そう、この喉仏。

ほどよく主張しているこの喉仏を通って出される声は、耳の奥深くまで浸透して私を溶かす。


この喉仏をもっと見ていたいから。


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