裁き屋始末録
その日は大学の学園祭だった。
「ねぇねぇ、聞いた?
あの有名なパティシエの正岡朱乃が来るんだって!」
「えぇっ!?
あの何時間も並ばないと買えない正岡朱乃のスィーツが、ウチの大学の学園祭で食べられるのぉっ!?」
女学生の話題は、朱乃の出店話で持ち切りだ。
もちろんこれは、瀬尾のシナリオの内である。
出店とは言え、有名パティシエの店を屋台でやる訳には…という、運営委員の計らいがあったのだろう。
特別にプレハブ小屋が持ち込まれることになった。
「まいど!」
機材などの運搬は住江、秋野、宿尾が行う。
元々、住江は引越業者だから、この仕事は手慣れたものだ。
「はい、それはそこ!
秋野、それは向こうに置く!
ちょっと宿尾!
どこ持ってくんだ、それを!」
やがて朱乃と香奈が現場に到着した。
女学生一同は一斉に、二人を拍手で迎える。
「朱乃ちゃん、凄い人気ね…」
「香奈ちゃんも有名人なのに、誰も気付いてないよ…」
「私はいいの。
今回はサポートなんだから。
じゃ、始めよっか」