裁き屋始末録

未来に希望を、外道に断末を

 
流石に朱乃は、洋菓子の世界では有名人だ。

顔パスで難無く角戸田の控室の前まで来た。


「朱乃ちゃん」

「うん。
宿尾、頼むわ」


宿尾はタロットカードを扇状に広げ、控室のドアをそっと開ける。

中では角戸田が、ソファーにフン反り返りながら葉巻を吸っていた。

こちら側に背を向けているから、二人には気付いていない。

「よし」


キャラキャラキャラキャラ…


宿尾は扇子であおぐように、広げたタロットカードで金粉を巻き上げた。


「ん…おぉ?
な、何だぁ?」

異変に気付いた角戸田は、葉巻を消して部屋中を見渡した。


しかし金粉は徐々に量を増し、気が付くと角戸田の視界を塞ぐほどまでに部屋中に撒き散らされていた。


朱乃は部屋の中の状態を確認すると、

「宿尾、後は任せて」

裁き用の黒いミトン(鍋つかみ)を右手にはめた。


「頼むね」

金粉を使い切ると宿尾は、角戸田の首あたりに向けて青く光る待ち針を投げた。

待ち針は角戸田の襟元に、気付かれることなく命中する。

これが、金粉の嵐の中でターゲットを捕捉するための目印になるのだ。

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