裁き屋始末録
 
「凄いじゃない!
人通りも多い通りだし、絶対に流行るわよ!
イクノちゃんの腕前は、太鼓判押してあげるから!
私もちょくちょく来るからね!」

朱乃はイクノの手をとり、自分の事のように喜びはしゃいだ。

「それで…
先輩、お願いがあるんですが…」



「…じゃあ結局コンテストは、開店前の自分の腕を試してみたかった、ということだったのか。
結果的に良かったじゃん。
あのとき朱乃ちゃん、かなり悩んでたみたいだから。

それで…
そのケーキがイクノちゃんのオリジナル第一号だね?」

朱乃は宿尾の占い館に来ていた。


「…で、何で俺に?
自分で食べないの?」

「いいからいいから、ね!」

宿尾は丁寧にケーキをフォークで割り、一口大にしてから口に入れた。


「………!?
ぅんまい!!
何、この味…
食べたこと無い味だけど、マジで美味いよ!」

宿尾の驚いた顔を見て朱乃は、
「してやったり」
とでも言いたそうな顔で微笑みながら言った。


「希望の味、よ!」

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