裁き屋始末録
メモには、
[見事な跳弾だ。
腕は落ちてないようだね。
久しぶりに話がしたい。
間仕切り屋・竜田川千早
(たつたがわ ちはや)]
…と、書かれていた。
「はぁ、アイツか…」
裁き屋のような組織は他にもある。
世の中の外道に対して怒りを燃やす者は、何人も居るのだ。
間仕切り屋というのも、そんな組織の一つ。
特にメモの主[千早]は、秋野が裁き屋になる前にコンビを組んでいた女。
秋野を知り尽くしているからこそ、次の行動を読むことができるのだ。
二人きりの活動に限界を感じ…
秋野は裁き屋へ、千早は間仕切り屋へと、それぞれの道へ別れたのだ。
それきり連絡は絶っていたが…
「アイツ、今更何の用だ?」
[昔の女]に会うというのは何だか気が引ける。
それでも秋野は、昔使っていた[千早との合流の合図]を送った。
ハンカチにペンで
[今夜8時、いつもの場所で]
と書き、スクーターのミラーに縛る。
そして秋野は再び、パチンコ屋に入った。
1時間後。
秋野が駐輪場に戻ってみると、ハンカチが取られていた。
「………」
無言でスクーターのセルを回し、秋野は走り去った。