裁き屋始末録
「さ、さ…すが…は…
アッキ……ね……」
ドッ
膝を着いた姿勢から前のめりに倒れ伏すと、それきり千早は喋らなくなった。
秋野は千早の胸ポケットから自分の携帯電話を出し、電話をする。
「元締、終わったぜ…
アンタが千早と合流する前に連絡をくれなかったら、今頃俺がココに転がってたぜ…」
『お疲れ様でした。
私も間仕切り屋の元締が暗殺されたという情報を、もう少し早く入手していれば…』
「俺に辛い業務をさせずに済んだ…ってか?
……いいんだ。
裁き屋になった時から、身内や知り合いが的になった時の覚悟は出来ていた。
それじゃあな、元締…」
ピッ
秋野は電話を切ると、
「俺が自分のメットで来た訳はこれだよ」
ヘルメットの中から一輪のカーネーションを出した。
「お前の好きだった花だ。
ちょっと季節外れだが…
俺からの餞別だ。
……あばよ、
俺の最高のパートナー。
そして………
俺が愛した唯一の女…」
千早の骸の胸にカーネーションを置き、秋野は夜の街中に消えた。
裁き屋とは、非情な掟に縛られている。
親、兄弟、親友、恋人…
そして相棒…
自分の大切な者が的となっても、消さなくてはならない。
涙を隠して…