裁き屋始末録
断末と終末の二重奏
助っ人参上!
第5閃!
ここは、とある多目的ホール。
「お、村雨さん!」
「何だ、宿尾…
お前さんも来てたのか」
「香奈ちゃんのコンサートには来たこと無かったんでね。
大人気で滅多にチケットは手に入らないし。
一度は見ておこうと思って、手ぇ回してもらったんスよ」
「へぇ、
じゃあ楽しんでいきなよ」
「え、村雨さんは?」
「…業務、だよ」
村雨は、
[見史屋香奈の
バイオリン・リサイタル]
と書かれた立て看板を掠めるように通り過ぎ、コンサートホールに入って行った…
控室では、香奈とマネージャー[富山カスミ]が慌ただしく動いていた。
「香奈さん、衣装…」
「そこの赤いトランク!
吊っておいて!」
パタパタとファンデーションを顔に叩きながら、カスミに答える香奈。
普段おっとりしている香奈が、こんなに急いでいる姿はなかなか見られない。
「ところでカスミさん、もう開場したわよね?」
「えぇ、本番開始まで…
あと25分ですよ!」
「!!
えっ、ちょっ、ホントに!?」
コンコン…
控室のドアをノックする音。
「あ、は〜い!
今ちょっと手が放せないから、入って来てくださ〜い!」
アイラインを書きながら、香奈はドアの方を見た。