裁き屋始末録
 
ガチャ


「こんばんはぁ…」

大きな花束を持った、若い女性が入って来た。


女性を見て、思わず香奈は椅子から立ち上がる。

「わぁ、あこちゃん!
久しぶり、来てくれたの!?」

「うん、
今日はチケット買えたからぁ」

「んもおぅ、連絡してくれればチケットぐらい回したのにぃ」

「あ、なるほどですね〜
…えへへ、な〜んてね。
香奈ちゃんをビックリさせようと思ってぇ。

コンサート頑張ってね!
はぁい、コレ」

あこは香奈に花束を渡した。

「ありがとう!
楽しんでね、あこちゃん」

「うん。
じゃあねぇ、香奈ちゃん」

バタン…


カスミが香奈に、冷たく一言。

「香奈さん…
あと15分で開演ですよ」

「あ、え、ちょっ…
ええぇ!!?」

カスミの言葉に香奈は慌てふためき、なりふり構わず着替え始めた。

「あれ、ちょ、ぃや、
ちょっと〜、カスミさん!
背中のファスナー閉めてぇ!」


「…俺が閉めてやるよ」

香奈の後ろに居たのは…
村雨だった!

「え、え、ええぇぇっ!!?
ちょっと!
村雨さんが何でぇっ!?」


村雨は香奈の赤いドレスの、背中のファスナーを上げた。

そのドレスのように、カアッと顔を赤らめる香奈。

「あ、あ、あの…」


そんな香奈を全く気にしない様子で、村雨は答えた。

「香奈、俺は業務中だ。
だが、お前は気にせずに自分の[仕事]をしな。
それを言いに来ただけだ。」

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