裁き屋始末録
「は、はい…
あの…
的は誰なんですか?
私は聞いて無いから…」
香奈の問い掛けに、村雨は目を閉じて答えた。
「聞いてどうする?」
「あ…
すみません…
業務に参加しない者は、業務内容に触れることなかれ…
[掟]でしたね。
…って、マネージャーのカスミさんはどこに行ったか知りません?」
「あぁ、彼女なら…」
村雨は人差し指で足元を指す。
そこには横たわるカスミが!
「まさか!
的はカスミさん!?」
「…いや、当て身で寝てもらってるだけだ。
騒がれると面倒だからな」
ホッと胸を撫で下ろす香奈。
が、すぐに青ざめた顔で村雨に尋ねる。
「む、村雨さん…
今、何時何分ですか?」
村雨は腕をチラと見て、
「…6時56分だ」
「えええええええっ!?
たたたたた大変っ!!」
香奈は[これ以上は無い!]といった慌てぶりでバイオリンケースを引っ掴んで、控室を飛び出して行った…
…その様子を物陰で伺っていた者が居た。
「的…かぁ、
なるほどですね〜。
香奈ちゃんも同業だったのぉ。
…協力してもらおうかなぁ?
私一人だと不安だしぃ」