裁き屋始末録
 
「は、はい…
あの…
的は誰なんですか?
私は聞いて無いから…」

香奈の問い掛けに、村雨は目を閉じて答えた。

「聞いてどうする?」


「あ…
すみません…
業務に参加しない者は、業務内容に触れることなかれ…
[掟]でしたね。

…って、マネージャーのカスミさんはどこに行ったか知りません?」

「あぁ、彼女なら…」


村雨は人差し指で足元を指す。

そこには横たわるカスミが!


「まさか!
的はカスミさん!?」

「…いや、当て身で寝てもらってるだけだ。
騒がれると面倒だからな」

ホッと胸を撫で下ろす香奈。


が、すぐに青ざめた顔で村雨に尋ねる。

「む、村雨さん…
今、何時何分ですか?」

村雨は腕をチラと見て、

「…6時56分だ」


「えええええええっ!?
たたたたた大変っ!!」

香奈は[これ以上は無い!]といった慌てぶりでバイオリンケースを引っ掴んで、控室を飛び出して行った…



…その様子を物陰で伺っていた者が居た。

「的…かぁ、
なるほどですね〜。
香奈ちゃんも同業だったのぉ。
…協力してもらおうかなぁ?
私一人だと不安だしぃ」

< 37 / 80 >

この作品をシェア

pagetop