裁き屋始末録
コンサートホールと言うと聞こえは良いが、実際は市営公会堂だ。
市が主催の演芸や落語などの催し事が大半を占めているなら、それに参加する老人達の情報を掴むには最適な場所だ。
矢の発射装置が壊されたことに感づき、シラユキとアジロギは動き出した。
「おい、アジロギ。
侵入者が居るみたいだぜ」
「あぁ、矢のトラップを抜けたみたいだな。
あれを避けるとなると、相手は相当のヤリ手…
まさか、噂の裁き屋か!?」
「どうする?
もし裁き屋だったら、俺達は始末されちまうぜ?」
「なに、心配するな。
この部屋に来るまで、あとトラップは3つもある。
全部を避けてココまで来られるものか」
「それもそうだな」
自分達の仕掛けたワナに、絶対の自信があるのだろう。
シラユキとアジロギは、集めた個人データをパソコンに打ち込むのを止めなかった。
アジロギの後ろには既に香奈が立っており、自分の首に斬糸の弓が当てられていることにも気付かずに。
(外道、断末…)
ゴドッ
ボーリングの球を床に落とすような音がした。