裁き屋始末録
 
全ての荷物をまとめ、トラックの荷台にロープで固定させた頃には、既に日が暮れていた。


「お兄さん、お疲れ様。
正岡さんと晩御飯作ったから食べて行きなよ」

ちょうど小腹も空いていたし、朱乃が作った御飯だというので

「じ、じゃあ遠慮無く…」


住江は知らなかった。

朱乃はスィーツ以外の料理が、全然ダメダメだということを。

食後、住江が青い顔をしていたのは言うまでもない。


綿野シマは一人暮らしの女性。

なのにココは、何故か最近まで誰かと住んでいたような雰囲気の家だった。

住江は冷たい麦茶と、朱乃が差し入れたティラミスを口直しに食べながら、思い切って聞いてみた。

「綿野さんは一人暮らしは長いんですか?」


饒舌だった綿野が、急に黙り込んでしまった。

「本当は…娘が居たのよ」


住江は[しまった]と感じた。

聞いてはいけないことを聞いてしまったようだ。


咄嗟に朱乃がフォローに入る。

「あ、あの…
私が作ったティラミスの味は、どうですか?」

綿野は俯いて、

「ナミは…
ティラミスが好きだったわ…」

「あ…」


薮蛇になってしまったようだ。

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