裁き屋始末録
「ワッハッハッハッ!」
悪の高笑いが響く中…
「…手向山
(たむけやま)さん…
ですね?」
「ハッハッ…は!!?」
高笑いを止めさせたのは、部屋の暗がりから現れた人物だった。
それは中年の紳士的な男性。
「はじめまして。
歌人を生業(なりわい)としている者です。
私の名は、小倉定家」
「お、小倉!?
裁き屋の…元締!!
しかし貴様は闇狩りに殺されたハズだ!!」
小倉はニッコリ笑って、
「ふふふ。
幽霊ではありません。
ちゃんと足は付いていますから、ご安心を。
それよりも…」
小倉は手に何枚かの紙のフダを持ち、広げた。
「百人一首…
御存じでしょうか?
いにしえの歌詠み百人の短歌をカルタにした、昔からの遊びです。
この百首の歌の内、最初の一文字が一つしか無い歌が七首しか無いのを知っていましたか?
その七首のコトを
[むすめふさほせ]
と言いまして、取るのが非常に難しい。
そう。
そう簡単に[狩る]ことはできないのです」
小倉は、その七首を詠み上げ始めた。