裁き屋始末録
「久しぶりだな、村雨。
そして…顔を合わせるのは初めてですね、小倉さん」
僧侶のような姿は、虚無僧の装いの名残だろう。
顔の左側に大きな傷を持つ青年が、手向山と村雨達の間に割って入った。
「お前さんが、裁き屋を辞めて以来だな。
闇狩りのボスになっていたか」
「村雨、まんまと騙されたよ。
これも瀬尾のシナリオか?
やっぱり頭脳では、ヤツの方が一枚上手だったな」
苅田は鉤手甲(かぎてっこう:手の甲からフォークのような爪が生えた武器)を右手にはめながら、村雨との間合いを計っている。
手向山は自分が疎外されている気がしたのか、苅田に向かって怒鳴った。
「闇狩りのボスはワシだ!
か、勘違いするな!」
ズビュ!
鉤爪が手向山の胸に深々と打ち込まれた…
「この場の空気が読めない下衆は消えな。
俺は村雨と殺りあう時を楽しみに、今まで生きて来たんだ。
誰にも邪魔させねぇ…」
鉤爪を手向山の胸から引き抜き、ペロっと舐める苅田。
「元締、下がってて下さいよ。
巻き込まれたら怪我どころじゃ済みやせんぜ」
村雨も黒い千点棒を上着のポケットから取り出し、口にくわえた。