裁き屋始末録
「国会議員の淡路先生…
ですかね?」
淡路の前方、
暗闇から誰かが語りかけた。
「三笠君かね?」
月の光に、語り掛けた者の顔が浮かぶ。
村雨だ。
「おぉ、あんたは!
あの有名なプロ雀士の村雨さんかね?」
村雨は、恥ずかしそうに頭を掻きながら答えた。
「いやぁ、先生のような高名な方が、俺を御存じとは恥ずかしい限りで…」
淡路は駆け寄り握手を求めた。
「私も麻雀が三度のメシより好きでねぇ。
君、この辺りに住んでるのかね?」
「いや、今日は先生にちょいと用がありやして…」
言うが早いか村雨は淡路の背後に回り込み、腕で首を固めた。
そして首筋に尖った金属製の棒の先端を当てた。
黒い千点棒だ…
「あんたにゃ今、
死の立直(リーチ)が掛かりやしたぜ。
時に先生、九連宝燈
(ちゅうれんぽうとう)
って役を知ってますよね?
役満の中でも滅多に出ない、難しい役ですぁ。
その難しさから、この役は何て言われてるか知ってますかぃ?」
「ぐっ…ひっ…や、やめ…!」
淡路は恐怖で声が出ない。