掻き鳴らす、危険な指先
ギターの彼
バン、と。爆風のように襲いかかる、音の塊。
歓声は和音に混ざりあい、ボーカルの扇動で、観客は更に興奮をかきたてられている。
上げられた腕の合間を縫って、私はそのボーカルの彼ではなく、ギターを弾くあの人に視線を向けた。
ネックの上を滑る、長細い指。
少し骨ばった、ピックを持つ手。
その手で、触れられたい──。
爆音も敵わない位、いつも彼の手が、私を高揚させた。
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