掻き鳴らす、危険な指先
「今日も来てくれてありがとねー」
ライブに通っているうちに仲良くなった子達と、外の椅子に腰かけて話していると、メンバーがそこに挨拶に来てくれた。
何となく流れで彼等もそこに座りだし、後から来たギターの彼は、当然のように私の隣に座った。
ドクン、と。心臓が跳ねて、慌てておさめる。
別に彼は、私が隣だから座った訳じゃない。そう、そこに灰皿があったから……ただそれだけ。
ヘビースモーカーの彼は案の定、ポケットから煙草を取り出し、火を点けている。
視界の片隅にかろうじて映った、煙草を持つ手。
その、爪の形まで綺麗な指先に、つい見惚れそうになる。
……こんな妙な欲望だらけの思考、誰にも覗かれたくない。