掻き鳴らす、危険な指先
溢れる感情に堪らずため息を吐くと、隣から突然声が掛かった。
「悪い、煙かった?」
「い、いいえ、大丈夫です……」
不意打ちに驚き、語尾が掠れる。
それに笑ったのだろうか。いつもはクールな彼がふふ、と、声を上げる。
「髪、食ってるよ」
その綺麗な指が、何の躊躇なく私の頬に触れた。
「……あ、す、みませ……」
触れられたところから酷く熱を帯び、もう顔を上げていられない。
「打ち上げ行くかー」
その声が掛かり、みんな席を立ち始める。
彼は煙草を灰皿に押し付けながら、行くでしょ? と訊いた。