お嬢様の快楽
お嬢様 薊side.
その日、るー君がみんなに注目されているのはすぐにわかった。
わかっていたのに、私はそれどころじゃなかったのだ。
何もできなかった。
*
入学式が終わり、特に中身の入っていない鞄をとって教室を出て、要さんが待っているであろう学校の校門脇の駐車場へ向かった。
「じゃあ、あざみんバイバーイっ!」
歩きで帰るりんちゃんは校門の方へ行く。
「ばいばい。りんちゃん迷子にならないでね。」
「ならないよ!!?」
歩いていた足を止めて振り返った。
漫画なら効果音が後ろに書いてありそうなぐらい凄い勢いで。
「中等部と場所が違うから迷子になりそうだな、て思っただけ。」
「ここ中等部の隣じゃん!」
「りんちゃんの事だからありえるなって。」
「そこまで馬鹿じゃなぁああああああいっ!!」
そんなりんちゃんの叫びに周りにいた生徒に呆れ顔が浮かぶ。
そう言えば、この子有名人なのよね……。
エリートアスリート。
ただスポーツしてれば憧れを通り越して尊敬にあたいする存在。
去年、陸上全国大会の100m、200m走で1位になって注目されてる。
……ただし、全国大会後に全校生徒の前での報告会で大いにその馬鹿さを晒してくれた。
そんな感じで付加価値(?)がつきつつ有名人となっている。