お嬢様の快楽


「るー君?」

まだたまが歩いていった方を見つめていた。

「さっきのはどういうこと?」

たまと同じ質問。

「どういうって?」

「遠くって……どこ?」

るー君の方は見ない。

多分るー君もこっちを見ていない。

「…………」

「…………」

沈黙が訪れる。


ーーわかってるんだろ?

ーーわかってる。


そんな暗黙の了解はあったのに聞いてしまった。

数秒の沈黙の間、周りのざわめきも聞こえなかった。


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