ほ く ろ 【密フェチ】
「愛してる・・・・・・」
最後はいつもそう言って果てる彼に、私は何も言い返さない。
そして彼は私の首の後ろに唇を這わし、私の右耳の後ろにキスをする。
それが“おしまい”の儀式。
ずっと気になっていたことを訊いてみた。
「どうしてそこにキスするの?」
彼は、タバコの煙を私に吹きかけながら言った。
「お前のそこにあるほくろが好きだから」
私にほくろがあった。
28年間知らなかった。
「今日は帰りたくない」
初めてわがままを言ってみる。
物分かりの良いはずの女が面倒なことを言い出した。
そう思っているんでしょ?
眉をしかめた彼がため息をつく。