バニラ味の嫉妬
「……僕の食べかけなんて、食べたくないんだ」
駿くんは拗ねたように小さく頬を膨らませる。
──違うのに。
私が欲しいのは、君の赤くて可愛い舌の方なのに。
どうせなら、数分で溶けてしまうアイスクリームを舐めるより、私のことを──…。
オフィスのロビーに着くと、白い壁にもたれて電話をしている誠先輩の姿が見えた。
すらっとした長身で、手首にはめた腕時計を確認する仕草がさまになっている。
すっかりアイスを食べ終わっていた駿くんは、さっきまでの無邪気な瞳を消し、険しい目つきで誠先輩を捉えていた。