私を好きにならないで


同期入社して、初めて隣の席に座った彼。橋口尚也。



「ねえ、何考えてるのかわからないってよく言われない?」

暇潰しの遊び心で私は彼にそう聞いた。

社内で一人だけ堕ちないこの男、橋口君。どんなにモーションかけてもスルーされて、やみくもにアプローチしまくっても全く墜ちる気配すらないこの男。

挙句の果てには

「話かけんな。俺、お前なんかどうでもいいんだよ」

なんて上から目線で冷たく言い放たれた時、私の中の女が気づいた。

ああ、私は、冷たくされるのが好きなんだって。

「どうでもいい」

この距離感が何とも身悶え、私のプライドを刺激する。

彼に抱かれてみたい。
一度でいいから熱く激しく。

私を「どうでもいい」感じに、扱って─────。


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