ちくちく
爆弾
一瞬で彼は現れた。
買ったばかりのコピー機が目詰まりを起こし『なんで私の時にー』と、思いながらカバーを外し、用紙を取り出していると
彼が見えた。
コピー機の部品の隙間
嫌いではないトナーの香り
スーツ姿に坊主頭
そんな彼が現れた。
取引先である
社会人野球の部員なのだろうか
坊主
坊主頭……。
彼は応接室に案内され
私は『佐々木君。お茶頼む』と課長に言われてお茶の用意をする。
鳴り止まぬ鼓動を落ち着かせ
私は応接室に行くと、彼は目を閉じ私の方を見もせず熟睡中。
触りたい。
その坊主頭触りたい。
いけない。ダメ……あぁ、でも触りたい。最近見てない。会ってない。触ってない坊主頭。
私はお茶をテーブルに置き
引き寄せられるように彼の背中に回り、誘惑に負け彼の頭に手を伸ばす。
チクチクとする
ざらざらとする
刈った後の芝のよう。
手はザワザワしてるけど、腕先から心臓まで雷に打たれたようにビリビリ。
久し振りの感触に幸せを感じていると
急に大きな手が私の手を掴み、鬼のような形相が私を捕獲する。
「何やってんだ」
低く怖い声に身体が震えた。
彼は私の腕を取りながら立ち上がり、素早くグイグイと私を壁に追いやり逃げ場を失わせる。
「何やってんだよ」
怖い。
「坊主頭を触ってました」
涙目で彼に言う。
「どうして?」
「触りたかったから」
「はぁ?触りたかったら触っていいのかよ。じゃぁ俺はお前のおっぱいを触りたいし舐めたいけど、やっていいのかよ」
「ダメです」
涙がポロリ。
「俺の頭に爆弾が仕込んでいて、お前が触ってスイッチ入ってこのビルが爆破されてもいいのかよ」
「ダメです」
「坊主頭フェチかよ」
「はい」
威圧されつつ
なぜか心地良いのは、彼の怒り方が体育系だからなのか。
あまりの近距離に
ギュッと目を閉じていると
唇に柔らかいものが当たり、生ぬるい軟体のモノが私の歯を割り舌を捜し、口内を味わっていた。
「俺は唇フェチ」
私の唇に
爆弾が仕込まれてたらどうするんだろ。
そう思いながら
私は彼の頭を指で感じ
彼は私の唇を感じる。
【完】