黄昏の檻【密フェチSS】
「……61、62」
あと10秒。
少し早いくらいかなと思っていると、彼の左手が柵を握り締め、私は彼の腕で囲われた。
力がこもった左腕に、地脈のように広がる血管。
頭がそれで一杯になって、数えてた数を忘れてしまう。
「ごめん。もう一回」
「うん」
ずっと手首を握っていると変な気分になる。
もっと触れたい。
もっと感じたい。
そう思うと、私の脈動の方が激しくなる。
「脈速いでしょ」
「ちょっとだけね」
「速いんだよ、好きな子といるから」
「え?」
見上げたその瞬間。
左手が私の頭を掴み抱き寄せられた。
「好きだ」
「……え?」
唇のあたりに、彼の頸動脈。
脈打つ鼓動が聞こえそう。
「返事は?」
黄昏の檻の中で、私と彼の心音が重なり合う。
【fin】