恋愛短編集
・初めての恋心 (甘)
これは今より少し、前の話。
優雅なお花に囲まれた国に、アリスという名のお嬢様がいました。
ピンク色のドレスがよく似合う可憐な少女で、歳は14でした。
アリスには、レンという執事が仕えていました。
温厚な性格ながら何でも器用にこなし、アリスのお父さんにもお母さんにも気に入られるほどの好青年だったのです。
レンは、アリスより5歳年上でした。
レン「 お嬢様、おやつのガトーショコラとローズヒップティーです。 」
アリス「 ありがとう。
でも、今日はレンが食べていいわ。 」
レン「 えっ?何故です? 」
アリス「なんだか今はおやつを食べたいって気分じゃないの。
だからレンにあげるわ。 」
アリスは、レンが甘いもの好きなことを知っています。
自分も甘いものは好きだけれど、今日はレンにプレゼントしようと考えたのです。
レン「 そうなんですか…それじゃ、いただきます! 」
ぱぁ~と笑顔になりました。
アリス「 どうぞ 」
アリスはそのレンの笑顔を見てあげてよかったと思っていました。
レン「 ーーっ、美味しい! 」
アリス「よかったわね」
レン「はいっ!!」
アリスのおやつは、どれも名のあるシェフが作っているので、おいしい筈でした。
それに、そのほとんどがアリスのお気に入りの味なのです。
レン「 優しいんですね、お嬢様。 」
アリス「 そんなことないわ。 」
レン「 いえ、優しいですよ、やっぱり。 」
レンはアリスの好意にちゃんと気が付いていました。
それはレンがアリスの幼い頃から、ずっと傍にいたからです。
アリス「 それ、食べ終わったら散歩ね 」
レン「 はい! 」
大きな家の敷地内の園庭。
食後にはそこで、二人で散歩をするのが日課でした。
アリス「 あ、バラが咲いたのね! 」
レン「 はい、赤と黄色…彼方には青いバラもありますよ 」
アリス「 本当だわ・・・きれい・・・ 」
花には詳しくないけれど、鮮やかな色彩の中を歩くことは、いつの間にかアリスの楽しみになっていました。
アリスはお嬢様だから、他の家庭より過保護に育てられています。
だからでしょうか・・・・
必要以上に街へ出かけることを禁じられているので、こうして外の雰囲気を感じます。
街になんか出なくても、アリスは満足なのです。