雨夜の月に【密フェチSS】
彼の黒髪が濡れている。
けれど、昨夜のように冷たくはなかった。
そして、「愛している」と鼓膜に彼の優しい声が響いた。
夢を見ているのかもしれない。
それならば、現実には口に出来ないことを言ってみたい。
「ずっと、傍にいて」
「そのつもりだ」
彼の表情は見えない。ただ、彼の黒髪がわたしを濡らしていく。
ベッドにふわりと倒されると、心地好い重みが加わった。
そして、わたしは瞳を閉じる。
濡れながら夢の続きを始めるために。