戸惑いdistance


〜里穂side〜



こーたくんが来ない。



今日は金曜日

いつもの約束の日。



フェンスに寄り掛かって
ため息をついた。



気づいてくれるかな、なんて

さっき唇に乗せた
桜色のリップをなぞる。



里「用事でもできたのかな」



部活を終えた生徒が
帰りはじめる姿を見て、

もう一度ため息をついて
下駄箱に向かった。





里「・・・あれ?」


靴箱を開けると
こーたくんに貸したはずの
CDが入っていた。


付箋で貼られた
"ありがとう"の文字。

いつもは必ず
直接返してくれたのに・・・


なぜかぽっかりと空いた心を埋めるように
私はCDを抱きしめた。








その次の週も、次の週も
こーたくんは現れなかった。


クラスが離れているため
姿を見かけることもない。

たまらなくなって
ケントに電話をかけた。



里「あの、最近さ、
こーたくん、元気?」

ケ「何だよいきなり(笑)
いつも学校来てるけど?」



なんだか涙が出そうになって
慌ててお礼を言ってから
電話を切った。




私のこと、嫌いになった?


それとも、私の気持ちに気が付いて
その気持ちに応えられないからわざと避けてる?




里「・・・あ、」

ふと歩美の言葉を思い出した。


好きな人が・・・できたのかな。
だから、もう2人で会えなくなった・・・?



里「・・・っ」



もう、手遅れだった。

いつの間にか、
こーたくんの存在が
大きくなってた。

この気持ちに気付かないふりなんて、
無理だったんだ。




枕に顔を押し付けて
おもいきり泣いた。


そんなときでも浮かぶのは

やっぱりお日様のような
あの笑顔だったんだ。



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