僕は今日も罠をはる
瞳の奥の熱情
AM 7:58


聞きなれた足音を確認すると、
目の前にいた女の子に声をかけ、給湯室の中に引き入れた。

ドアはワザと開けたまま。

いつもと同じ"セリフ"を囁く。

「ねぇ、サキちゃん。今夜空いてる?」

顔を赤くして俯いた彼女の耳に
髪をかける仕草をつければ完璧。

サキちゃんはうるうるとした瞳で見上げてきた。

うん。可愛い。

でも、…残念。
僕が見たいのはこの瞳じゃない。



「いい加減にしたら?」

突然、入口から聞こえてきた鋭い声音に
彼女の肩が揺れた。

まぁ、厳しいと評判の彼女、上原結羽の声だから仕方がない。

顔を上げると結羽は無に"近い"表情でこちらを見ていた。

そう、その瞳の奥の感情以外は完璧な無だ。

まぁ、それを見抜けるのは僕だけだろうけど。

でもその表情は僕以外を怯ませるには充分で、目の前の彼女はチラッと僕を見上げると名残りおしそうに給湯室から出て行った。
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