もう二度と、返さない
「じゃあ寝ろよ。その代わり」
ぽん、と巽が自分の腿を打つ。
「ココで」
「ふざけてんの?」
「寝たいんだろ、だからほら」
こいつ、マジで馬鹿だ。
わかって言ってるんだろうけれど、無理だし神経疑うし、現状が現状だし、何よりその腿でって。
「寝ないの?」
「寝ない」
成績優秀、スポーツ万能、性格は難ありだけど、こいつに恋する子は多かった。
でも私はそんなの、どうでも良かった。
「我儘な奴」
ゲーム途中のトランプが脇によけられる。
次の瞬間、私の視界から巽が消えていた。