もう二度と、返さない
「ちょっ!」
「はいはい、暴れない」
代わりに感じるぬくもり。
口元近くには太い腕があって、肩の上に顎が乗っていて。
挙句、脚が私の身体を包んでいた。
「離してよバカ!」
デニム越しでは温度はまだ伝わらない。でもくっついているのはわかる。私の熱は勝手に上がる。
「バカで結構」
やめてよ、こんなの。
「なに、泣くほど俺のこと好き?」
「泣いてないし好きじゃない!」
どうして今ここで。部屋で寝ている奴らがいて、私も巽もお酒が入っているのに。
逃がしてもらえない状況を諦めて、私は耐える決断をした。
「俺は好き」
なのに巽はそれすらも容易く壊す。
「今ここでしたいぐらい」
ロマンチックの欠片もなしに。