黒い翼


あたしはさっさと廊下を歩く。


少し顔が熱いのは、きっとこの日差しのせいだ。


シキが出てきて照れたからじゃない。


『フってるのは、まだ翔のことが好きだから?』


頭の中でその言葉がリピートされた。


あたしは誰もいない旧校舎の方へ足を進め、日陰になっているところで腰を下ろす。


「……クソッ…」


図星なんだよ、畜生。


地面を力任せに叩くと、ぺチッという平たい音が聞こえて、影になっている地面の温度が手に伝えた。


こんなことを考えて、何度、自分が人間じゃなかったことを恨んだか。


〝恥ずかしい〟なんて、そんな単純な理由だったら良かったのに。


あたしは再びそう思った。
< 10 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop