黒い翼
余程飢えていたのだろう。
彼女は口の中に血が無くなるのを感じると、血が出ている僕の手にかぶりついた。
彼女が僕の血を啜る姿は、まるで飢えて礼儀を知らない卑しい怪物のよう。
と、我に返ったのか、彼女の動きが一瞬止まった。
「クソッ」
そして自分のしていることに気づいたのだろう。
悔しそうに吐き捨てた彼女は、僕を突き飛ばして鏡に映った自分を殴り、出て行った。
彼女の血の匂いが充満する。
「とんだじゃじゃ馬だ」
拒絶されればされるほど、興味がわく。
僕は口角を上げた。
「どうしたの、瀬来くん!!?」
さっきの音を聞きつけたのだろう。
女の教員が入ってきて、息を飲む。
右手が血だらけで、突き飛ばされたようにベッドに靠れかかっていて、入り口近くにある鏡にヒビと血がついている。
そして見られたのかは分からないが、笑う僕。
この状況は驚くのも無理もない。
「じ、事情は後にするとして、手当てを……」
そして僕はされるがまま、言われるがままの生徒になる。