黒い翼


あたしが泣いていても、泣き終わっても、シキは何も聞かなかった。


ただ、落ち着かせるように背中をさすって、幼い子をあやすように、よしよしスーパーマンが助けに来たぜ、なんて。


ほんと馬鹿にしてんのか、お前。


だけど、シキからすれば、あたしはそんくらい小さな子供に見えたのかもしれない。


「ごめん…」


洟をすすり、あたしは落ち着いて言う。


もう大丈夫だっていうことを伝えるのも兼ねて。


「おう」


彼は満足したのか、あたしに笑顔を向け、ここから立ち去ろうとする。


はた、とそこであたしはやっと気づく。


これだけの為に、来た?


何故あたしがここにいると分かった?


「シキ」


あたしは彼を呼びとめる。


返事をする代わりに、シキがこっちを向いた。
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