黒い翼
「貴方は分かっているんでしょう」
あれから少ししか経ってないような気がする。
季節は変わり、秋。
隣にいる彼女が真剣な顔をして、僕を見る。
今日はご機嫌ナナメかな。
「……なんのこと?」
僕は彼女の瞳に吸い込まれるように、彼女の顔に近づく。
と、一瞬、彼女の瞳が悲しい色を帯びた。
「……もういい」
分かってるくせに。
去っていく彼女の背中がそう言っていた。
「駄目だよ」
ドアに手をかけた彼女に、僕は言う。
ピタリ、と彼女の動きが止まった。
「これ以上、変わらないで。梗」
「……………………」
パタン、とドアが閉まった。